B-CeP

発泡プラスチック建築技術協会

木造住宅の耐震改修

令和6年能登半島地震に関する情報を以下のページからご覧いただくことができます。

ホームズ君 令和6年能登半島地震

耐震基準の変遷  ~大地震の被害を経て強化~

 日本の耐震基準は福井地震の後、1950年の建築基準法制定時に規定されましたが、その後も大地震による建物や人身の被害発生を受けて順次強化されてきた経緯があります。

 
1948年(昭和23年) 福井地震
1950年(昭和25年) 建築基準法制定(旧耐震基準)
1978年(昭和53年) 宮城沖地震
1981年(昭和56年) 建築基準法施行令改正(新耐震基準)
1995年(平成7年) 阪神淡路大震災
2000年(平成12年) 建築基準法改正

 1981年6月の改正では、木造住宅における壁量規定が見直しされ、以降に建てられた住宅は新耐震基準による住宅として耐震性があるとみなされています。2000年6月の建築基準法改正では、木造住宅の筋交い端部や柱頭・柱脚の仕様が規定され、耐力壁配置又は偏心率の計算、あるいは地盤調査が必要になるなど基準が強化されました。

木造住宅の耐震診断・改修の必要性 ~旧耐震基準の住宅ストックと被害~

 上記のように、住宅の耐震基準は1981年6月から強化され新耐震基準と呼ばれていますが、それ以前の旧耐震基準で建てられた住宅もまだ多く存在します。
 阪神淡路大震災をはじめとしたその後の大地震においては、昭和56年(1981年)以前に建てられた住宅で倒壊や大破が多かったことがわかっています。熊本地震の後の調査では、昭和56年前後だけではなく、平成12年(2000年)の前後でも被害状況に差が見られたことが報告されており、耐震基準の強化が被害の程度に影響していることがわかります。

耐震改修促進法  ~戸建住宅にも耐震診断の努力義務~

 1995年(平成7年)には建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)が施行され、特定建築物(多くの人が利用する耐震基準を満たさない建物)の所有者に対して耐震診断・改修を行う努力義務が課せられ、その後2006年の改正では耐震化率90%という目標が設定されました。更に2013年の改正では戸建住宅を含む全ての既存耐震不適格建築物に、耐震診断と必要に応じて耐震改修を行う努力義務が課せられることとなりました。こうした流れを踏まえ、各都道府県で耐震改修促進計画が策定され、多くの自治体で耐震診断や改修に対する支援制度が設けられています。

耐震診断の方法  ~評点で評価~

 耐震診断は耐震補強の必要性の有無を判定することが目的で、一般的には以下の「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」に示された方法で行われます。地盤や基礎に関する注意事項のほか、階別、方向別にその住宅が保有する耐力と必要耐力の比から上部構造評点を求めるもので、評点が0.7未満では大地震によって「倒壊する可能性が高い」、1.0未満では「倒壊する可能性がある」などと判定されます。

  •  旧耐震基準で建てられた住宅は評点が1.0未満となることが多く、このように耐震性能が不十分と判定された場合には早期に耐震改修を行うことが望まれます。

  • 上部構造評点判 定
    1.5以上倒壊しない
    1.0以上~1.5未満一応倒壊しない
    0.7以上~1.0未満倒壊する可能性がある
    0.7未満倒壊する可能性が高い

    「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」から

耐震改修の方法  ~壁基準耐力の向上~

 耐震改修には上部構造の補強と基礎の補強がありますが、このうち前者では壁の耐力を向上させることが重要になります。旧耐震基準の住宅では壁の水平耐力を発揮させる筋交いの構造や量が十分でない場合や配置が適切でない場合も多く、これらの対策として適切な位置に適切な強度をもった耐力壁をバランスよく配置することが必要となります。一般的に壁の耐力を向上させるには、筋交いを設けたり柱・間柱の外側に構造用面材を張ったりする工法が多く採られます。
 また、壁の耐力を向上させた場合にはそれに応じて柱頭・柱脚部の接合強度についても適切に対応する必要があります。特に1階の出隅では、壁の耐力が大きくなると出隅柱にかかる引き抜き力が大きくなるので注意が必要です。新耐震基準の住宅であっても2000年以前に建てられた住宅では柱頭・柱脚の接合強度が十分でない場合もあり、耐震診断の際にはこうした点にも留意して確認する必要があります。

「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」 ~耐震診断基準~

 既存建築物の耐震診断・耐震改修の推進を目的に、一般財団法人日本建築防災協会から2004年に旧版が発行され、その後2012年に現行版に改訂されました。在来軸組構法など木造住宅を対象とした耐震診断法として、次の3種が示されています。

  1.   (1) 誰でもできるわが家の耐震診断
  2.   (2) 一般診断法
  3.   (3) 精密診断法

 本書に示された診断方法は、建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づく国土交通省告示第184号別添に示された建築物の耐震改修の指針と同等以上の効力を有する方法として、国土交通大臣から認定されており、耐震診断の現場で広く活用されています。
 当協会が推進する構造用合板と発泡プラスチック断熱材を用いた耐震改修工法(SIR工法)においても、本書に示された診断方法が適用できることを前提としています。

耐震診断・改修に対する支援制度について ~支援制度と減税措置の有効活用を~

 各自治体(都道府県又は市町村)で耐震診断、耐震改修に対する支援制度が設けられています。対象住宅や支援内容は自治体によって異なりますが、要件を満たせば一定の支援を受けることができます。木造住宅の場合は、耐震診断によって、その住宅が保有する耐力と必要耐力の比から求める上部構造評点(「耐震診断の方法」の項参照)が1.0未満と判定された場合に、評点を1.0以上に改善する工事が補助の対象となることが一般的です。
 一般財団法人日本建築防災協会のホームページから各都道府県の支援制度の内容を閲覧することができます。

(一財)日本建築防災協会 耐震支援ポータルサイト

 一方、耐震リフォームには税の特例措置として、所得税減税(投資型)、固定資産税減額を受けることができます。所得税減税と固定資産税減額は同一案件で併用でき、また省エネやバリアフリーなど他のリフォーム工事とも併用できる場合があります。
 これらの詳細については、一般財団法人リフォーム推進協議会のホームページから閲覧することができます。

(一社)リフォーム推進協議「リフォームの減税制度」

耐震改修+断熱改修のススメ! ~設計者・施工者・施主の皆様で情報共有を~