B-CeP

発泡プラスチック建築技術協会

断熱改修について

断熱改修の必要性  ~省エネルギー効果と快適性・健康性の向上~

 住宅を断熱改修することには大きく分けてふたつの効果があります。ひとつは住宅の省エネルギー性能の改善、つまり暖冷房費の負担軽減で、これはCO2排出量削減にも寄与することです。もうひとつは、温熱環境の改善による快適性や健康性の向上で、部屋を暖かくしたり家の中の寒い場所をなくしたりするとともに、ヒートショックなどの健康リスクを軽減することになります。

    省エネルギー効果

  • 省エネルギー効果
  • 断熱性能の違いによる熱損失量の差

    断熱性能の違いによる熱損失量の差

    昭和55年基準、平成28年基準を満たす代表的断熱仕様の住宅(床面積120㎡)を想定、Q値算出法によりそれぞれの部位別熱損失量を求めた(昭和55年基準の熱損失量を100)。ただし換気回数は昭和55年基準では1.0回、平成28年基準では0.5回とした。

冬期には住宅の各部位から熱損失が生じます。外壁、天井(屋根)、床(基礎)の断熱性能を上げ、また断熱性能に優れた開口部材を使用することによって、住宅の熱損失は小さくなりエネルギー消費量を抑えることができます。
一方で、夏期においても躯体各部位の断熱性向上は熱侵入防止に効果があります。ただし、夏期はそれに加えて開口部の日射遮蔽を行うことが冷房負荷削減のために重要です。

省エネルギー以外の効果(快適性・健康性など)

断熱性能が不十分な住宅では、省エネルギー効果以外でも以下に示すように快適性や健康性に影響する様々な問題が生じやすくなります。住宅を適切に断熱することによってこれらの問題が解消され、快適性向上や健康増進といった面で効果が期待できます。

・体感温度

暑さや寒さの感覚(体感温度)は室温(室内の空気温度)だけで決まるのではなく、床、壁あるいは天井などの表面温度に影響されます。たとえば冬期に暖房機器を使って室温を高くしても、外気に面した壁の断熱が不十分であれば表面温度は低くなり、冷輻射により体感温度は室温より低くなります。夏期に冷房をしても屋根や天井の断熱が不十分であれば最上階の天井の表面温度が高くなり、体感温度は室温より高くなってしまいます。

体感温度計算式

  • 断熱性能が不十分な住宅

    断熱性能が不十分な住宅

    室温が高くても壁や床の表面温度が低く冷輻射のため体感温度は低くなる。また、部屋の上下温度差も大きくなる。

  • 断熱された住宅

    断熱された住宅

    壁や床の表面温度が高くなり、体感温度は室温に近くなる。また、部屋の上下温度差も小さくなる。

・室内上下温度差

冬期に暖房すると暖かい空気は上昇しますが、断熱性能が不足していると部屋全体が温まる前に熱が逃げてしまいます。そのために断熱性能が不十分な住宅では、部屋の上下で温度差が生じ、暖房をしても天井付近ばかりが暖かく足元は寒いという状態が起きやすく、上記の冷輻射による影響と合わせて、余計に寒さを感じることとなります。

・部屋間温度差

断熱性能が不十分な住宅では、暖房室と非暖房室の温度差が大きくなります。居間は暖かくても、廊下、トイレ、洗面・浴室は寒いということになり、ヒートショックによる健康被害のリスクも大きくなります。

住宅断熱化による健康への効果

住宅の断熱化は快適性を向上させるだけでなく、様々な健康へのいい影響があることが報告されています。たとえば断熱改修の前後で最高血圧が平均3.5mmHg改善したという報告がされています。この他にも居間の室温が低い住宅では入浴事故が起きやすくなることなど指摘されています(国土交通省 スマートウェルネス住宅等推進調査事業)。

国土交通省 スマートウェルネス住宅等推進調査事業 から

詳しくは以下から確認いただけます。

国土交通省 建築物省エネ法改正 ライブラリー 「ライブラリー 」から「広報ツール・その他参考資料」を開いてください。

断熱改修の方法  ~改修部位・改修範囲・改修工法の検討を~

 断熱改修には全ての部位を改修する場合、個別の部位のみを改修する場合あるいは壁と床などのようにいくつかの部位を組み合わせて改修する場合があります。また、建物全体の改修を行う場合と居間と寝室などのようにゾーンを限定して改修する場合があります。
 断熱改修を実施する部位が多いほど、また実施する範囲が広いほど改修の効果はありますが、その分費用もかかることになるので、状況に応じて効果が期待できる方法を検討することが重要です。たとえば外壁の断熱改修を行っても開口部材の性能が低ければ十分な効果は期待できないので、同時に高性能の開口部材に交換することが望まれます。
 また、断熱改修以外の改修工事、たとえば耐震改修やバリアフリー改修工事などと一緒に実施すると、別々に実施する場合と比較して費用や工期を抑えることができます。

取り合い部断熱改修

外壁の断熱改修

 外壁の断熱改修には、次のような方法があります。

内張断熱改修 ・・・・ 既存内装材の上から、又は既存内装材を撤去した後に断熱パネルなどを上張りする工法です。
充填断熱改修 ・・・・ 既存内装材を撤去した上で、壁内に繊維系断熱材又は板状断熱材を充填する工法です。室内側に防湿層を設けることができます。
外張断熱改修 ・・・・ 既存外装材を撤去した上で、躯体に発泡プラスチック断熱材等を連続的に施工し、通気胴縁と外装材を再施工します。

 いずれの場合も、床や天井などとの取り合い部を適切に処理することが必要です。

外張断熱改修について

既存外装材を撤去した後に躯体の外側から断熱材を外張りして連続した断熱層を形成します。新築の外張断熱工法と同じ施工方法で、断熱材の厚さにより省エネ基準レベルやさらに高性能の外壁断熱性能とすることができます。既存外装材を撤去するので、躯体の劣化状況を確認することができ、金物や構造用面材を取り付ける耐震改修との相性がいい工法といえます。外側からの施工なので住まいながらの改修工事とすることができます。

  • 一方で足場の設置が必要になるなど費用が嵩む要素もありますが、上記のように他の改修工事と一緒に行うことにより、こうした負担を抑えることができます。
    外張断熱改修を実施する場合は、床や天井など他部位の断熱性能向上も併せて検討することが効果的ですが、特に取り合い部の気密処理、断熱欠損対策が重要になります。また、外壁の断熱化の効果が十分に発揮されるよう、開口部材も一定の断熱性能を有するものを使用することが望ましいといえます。

  • 外張断熱の施工

    外張断熱の施工

断熱改修に対する支援制度について  ~支援制度と減税措置の有効活用を~

 断熱改修には国の補助制度があります。要件を満たすことによって補助を受けることができます。そのほか、自治体によっては独自の支援制度を設けている場合もあります。
 以下に令和5年度の国の支援制度を挙げていますが、既に今年度の申請受付を終了したものもあります。補正予算や次年度予算による支援制度の内容をご確認ください。

子育てエコホーム支援事業

こどもエコすまい支援事業の後継として令和5年11月から交付申請が開始されています。新築は子育て世帯などが対象ですが、リフォームは一般世帯も対象となり、開口部や躯体各部位の断熱化に対して20万円/戸が支援されます。
※子育て世帯、既存住宅購入、長期優良住宅とする場合など最大60万円/戸
 申請には事業者登録が必要

子育てエコホーム支援事業

既存住宅における断熱リフォーム支援事業(環境省)

地域及び改修する部位の組み合わせに応じた最低改修率を満たすことによって、補助対象経費の1/3(一戸建住宅の場合の限度額120万円)が補助されます。断熱材には部位、地域に応じて必要な熱抵抗値が定められています。また断熱材は予め本事業事務局に登録されていることが必要です。

既存住宅における断熱リフォーム支援事業

長期優良住宅化リフォーム推進事業(国交省)

評価基準型、認定長期優良住宅型というふたつのタイプがあり、劣化対策、耐震性、省エネ性などについてそれぞれ評価基準、認定基準に適合していることが求められます。たとえば評価基準型であれば補助対象工事費用の1/3(一戸建て住宅の場合の限度額100万円)が補助されます。
省エネ性のリフォームでは、開口部又は省エネ機器の導入など躯体の断熱改修を含まない選択肢もありますが、躯体各部位の断熱改修と開口部の断熱化という組み合わせも可能です。特に本事業においては耐震性と省エネ性がいずれも必須であることから、これらを同時に実施する改修工法の採用は優位性があるといえます。

建築研究所 長期優良住宅化リフォーム推進事業

令和5年度の交付申請受付は終了しています

税の特例措置について

一方、省エネリフォームには税の特例措置として、所得税減税(投資型、ローン型)、固定資産税減額を受けることができます。所得税減税と固定資産税減額は同一案件で併用でき、また耐震やバリアフリーなど他のリフォーム工事とも併用できる場合があります。
これらの詳細については、一般社団法人リフォーム推進協議会のホームページから閲覧することができます。

(一社)リフォーム推進協議「リフォームの減税制度」

耐震改修+断熱改修のススメ! ~設計者・施工者・施主の皆様で情報共有を~