B-CeP

発泡プラスチック建築技術協会

発泡プラスチック断熱材の物性

熱物性・燃焼性

熱伝導率(密度依存性)

発泡プラスチック断熱材の密度と熱伝導率
(同一組成のEPSの例)

一般的に発泡プラスチック系断熱材の
熱伝導率は以下の式で示されます

λsolid:固体の熱伝導率(W/(m・K))
λgas :気体の熱伝導率(W/(m・K))
λrad :赤外輻射による熱伝導率(W/(m・K))

製品密度が大きくなるとλsolidが大きくなる代わりにλgas、λradが小さくなります
製品密度が小さくなるとλsolidが小さくなり、λgas、λradが大きくなります

現在販売されているセル径が100~300μmの場合、同じ組成でも密度が50~100kg/m³までは密度の増加(セルの微細化)と共に熱伝導率が小さくなっていきますが、それより重くなると逆に熱伝導率が大きくなることが知られています

EPS

EPS

XPS

通常使用されている発泡プラスチック系断熱材の熱伝導率は内部に含まれる空気や発泡ガスの影響を大きく受けます。そのため、低温では表示性能よりも小さく高温では表示性能値よりも大きな値となります。

JISでは23℃、1atm時の熱伝導率が記載されていますが、工業用途のように広い温度範囲で使用する場合は使用温度に合わせた熱伝導率で設計される必要があります。

温度と熱伝導率の関係は正しくは曲線となるのですが、建築で使用される温度範囲であれば直線近似された値で設計するのが一般的です。近似式はJIS A 9501「保温保冷工事施工標準」解説に記載されています。

比熱・線膨張係数

発泡プラスチック系断熱材を他材料と複合して使用する場合、材料の比熱や線膨張係数が必要になる場合があります。それら物性を測定した事例を以下に示します。

EPS:ビーズ法ポリスチレンフォーム
XPS:押出法ポリスチレンフォーム
PUF:硬質ウレタンフォーム
PEF:ポリエチレンフォーム
PF :フェノールフォーム

1) 発泡スチロール土木工法 技術資料(材料マニュアル)
     第4版:発泡スチロール土木工法開発機構より抜粋
2) 鉄道技研

寸法安定性

発泡プラスチック系断熱材を他材料と複合して使用する場合、材料の比熱や線膨張係数が必要になる場合があります。それら物性を測定した事例を以下に示します。

発泡プラスチック断熱材の密度と熱伝導率
(同一組成のEPSの例)

発泡プラスチック系断熱材は出荷後もわずかですが寸法変化が発生します。
スチレン系断熱材(EPS、XPS)の場合、使用最高温度と考えられる80℃以下であれば収縮はわずかですが、それを超えると急激に収縮量が増すことがわかります。

<試験>
75、80、85、90℃で保存された
50×50×25㎜ N=3 試験体の縦、横、長さ変化の平均値を測定し寸法変化率を算出

<結果>
一般的に建築で必要とされる1%未満の寸法変化率とするためには、80℃未満の温度での使用が推奨される

最高使用温度

断熱材の最高使用温度は基材により変わります。一般的に断熱材は繊維化や発泡されることで表面積が大きいため熱の影響を受けやすく、基材限界性能より低い温度で使用されます。
また、一般的に断熱材は高温にさらされることで厚さが減少(シュリンク)し、必要とされる断熱性能が発揮できなくなります。

各種断熱材の最高使用温度(外皮は除く)

断熱建材ハンドブック,断熱建材協議会,(1994)

各基材樹脂の燃焼特性

発泡プラスチック系断熱材や有機繊維系断熱材は有機物ですから高温にさらされることで基材が分解し可燃性ガスが発生したり基材が炭化し着火するように変化します。
下表に各種有機物の燃焼特性をまとめました。表中に数字のないのものは測定事例がないあるいは測定できない場合になりますが、基材は有機物なので燃焼試験のような微小着火源による加熱では燃えなくても火災時のような高温の巨大着火源にさらされた時はいずれの場合も分解、着火、燃焼すると考えて対処する必要があります。

須賀 蓊,「酸素指数方式による燃焼試験について」,プラスチックマテリアル,11,(8),51,1970を元に作成  a)メーカーカタログによるコメント(1994)

発泡材料としての燃焼性試験法

JIS規格 燃焼性試験

発泡プラスチック系断熱材は有機物なので不燃認定を受けたものでも火災のような高い温度で長時間あぶられることで燃えることがわかっています。
一方JIS規格では火災初期の微小火炎を受けた際の着火防止性能の確認のため、それぞれの材料に合わせた試験方法で試験され合格することを求めています。

ロウソク法(EPS、XPS)

・ロウソクの炎を5秒かけて着火限界指示線まで移動
・着火限界指示線に到達したら速やかに炎を遠ざける
・試験片の炎が消えるまでの時間と燃焼の停止位置を測定
判定:3秒以内に炎が消え、残ジンのないこと
燃焼限界指示線を越えて燃焼しないこと

魚尾灯(ブンゼンバーナー)法(PUF)

・ブンゼンバーナーの炎を60秒あてる
・その後炎を遠ざける
・試験片の炎が消えるまでの時間と燃焼の停止位置を測定
判定:燃焼時間120秒以下、燃焼長さ60mm以下

酸素指数法(PF)

JIS K 7201-2プラスチック−酸素指数による燃焼性の試験方法
判定:酸素指数26以上

機械物性

機械的物性の特長

 発泡プラスチックは空気や発泡ガスの入ったプラスチックの泡により構成されています(写真)。一般的に使用されている30倍発泡では体積の約3%、50倍発泡では体積の2%が樹脂で構成されています。つまり、写真の各セルを隔てる樹脂膜の厚さは1μm未満しかなく、その量が物性を左右していることになります。
 発泡プラスチックは風船のような構造なので、その機械的物性(圧縮、曲げ、引張強度等)は非線形性を有しており、一定以上の変形を起こすと、降伏するようになります。JIS規格の圧縮強度測定法では10%変形時までの最大値を圧縮強さと規定しています。しかし、建築・土木分野で発泡体が10%も変形するような状態は考えにくく、例えば土盛り用途の場合であれば10%変形する前に建築物は倒壊してしまうと考えられます。
 一方、JIS規格強度以上の応力を与えた場合であっても発泡体は破断せず応力を支え続けますが、応力が無くなっても元の厚さに戻らないことになります(塑性変形)。一般的には、応力解放時に元に戻る比例領域で1%変形までの荷重以内で使用することを推奨し、安全に使用できる強度として規定しています。そのため、製品使用推奨値とJIS規格規定値は大きく異なることに注意が必要です。

発泡プラスチックの圧縮強さと歪(EPS の場合)

発泡プラスチックのセル構造(EPS の場合)

各発泡プラスチック断熱材について主要な機械的物性を測定した事例を以下に示します。

EPS ビーズ法ポリスチレンフォーム
XPS 押出法ポリスチレンフォーム
PUF 硬質ウレタンフォーム
PEF ポリエチレンフォーム
PF フェノールフォーム

「構造部材に用いられる発泡プラスチックの機械物性 その1」 小浦孝次
1480 日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2015年9月

圧縮物性

圧縮物性の密度依存性

EPS断熱材について圧縮物性と密度の関係を以下に示します。

圧縮強度

圧縮強度(密度換算式)
Cs(10%変形)=0.9649×ρa-5.5761 (N/cm²)
Cs( 1%変形)=0.3566×ρa-2.3014 (N/cm²)
 ρa=製品平均密度 (kg/m³)

「構造部材に用いられる発泡プラスチックの機械物性 その1」 小浦孝次
1480 日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2015年9月
EPS White Book EUMEPS 2016 Version 19/10/16

圧縮試験S-Sカーブ

圧縮弾性率

圧縮弾性率(密度換算式)
Cm(安全率20%)=(35.66×ρa-230.14)×0.8 (N/cm²)
ρa=製品平均密度 (kg/m³)

圧縮物性の温度依存性

EPS断熱材について圧縮強さと温度の関係を以下に示します。

EPS White Book EUMEPS 2016 Version 19/10/16

曲げ物性

曲げ物性の密度依存性

EPS断熱材について曲げ物性と密度の関係を以下に示します。

曲げ強度

曲げ最大強度(密度換算式)
Fs(実測値)=1.8836×ρaー8.4891 (N/cm²)
Fs(使用推奨)=1.484×ρaー12.26 (N/cm²)
 ρa=製品平均密度 (kg/m³)

「構造部材に用いられる発泡プラスチックの機械物性 その1」 小浦孝次
1480 日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2015年9月
EPS White Book EUMEPS 2016 Version 19/10/16

曲げ試験S-Sカーブ

曲げ弾性率

曲げ初期弾性率(応力10~20N)(密度換算式)
Fm(安全率20%)=(945.59×ρaー5169.7)×0.8 (N/cm²)
 ρa=製品平均密度 (kg/m³)
 

曲げ物性の温度依存性

EPS断熱材について曲げ強さと温度の関係を以下に示します。

EPS White Book EUMEPS 2016 Version 19/10/16

剪断物性

剪断物性の密度依存性

EPS断熱材について剪断物性と密度の関係を以下に示します。

剪断強度

剪断強度(密度換算式)
Ss(実測値)=1.0284×ρaー4.882(N/cm²)
Ss(使用推奨)=0.823×ρaー3.90565(N/cm²)
 ρa=製品平均密度(kg/m³)

「構造部材に用いられる発泡プラスチックの機械物性 その1」 小浦孝次
1480 日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2015年9月
EPS White Book EUMEPS 2016 Version 19/10/16

剪断試験S-Sカーブ

剪断弾性率

剪断弾性率(密度換算式)
Sm(実測値)=27.004×ρaー285.54(N/cm²)
Sm(使用推奨)=21.6032×ρaー228.432(N/cm²)
 ρa=製品平均密度(kg/m³)

剪断物性の温度依存性

EPS断熱材について剪断強さと温度の関係を以下に示します。

EPS White Book EUMEPS 2016 Version 19/10/16

引張物性

引張物性の密度依存性

一般的に発泡プラスチック系部材は引張り応力下での使用を想定していません。これは樹脂の体積分率が小さく、僅かな欠陥でも最大強度等への影響が避けられないからです。

そのため測定事例が少ないのですが、欧米では以下の式が知られています。

引張り最大強度(密度換算式)
Ts(使用推奨)=1.40×ρaー7.25 (N/cm²)
 ρa:製品平均密度(kg/m³)

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その他の物性の密度依存性

EPS断熱材について圧縮弾性率及びポアソン比と密度の関係を測定した事例を以下に示します。

1) 発泡スチロール土木工法 技術資料(材料マニュアル)
  第4版:発泡スチロール土木工法開発機構より抜粋